フィクションと劇場型犯罪の世界

押井守節と劇場型犯罪

 最近になって実写版も公開されたパトレイバーシリーズだが、押井守監督といえばかかせないのが社会的なテーマや、哲学的な問題を取り扱うという押井節だろう。特に本作機動警察パトレイバー2 The Movieに関しては劇場型犯罪をメインとして取り扱っている。

内容的に言えば1993年に公開されたアニメーション映画作品とは思えないほど、現在でも通用するような重厚な内容を取り扱っており、現代の人が見ても十分過ぎるほど満足できる作品になっている。勿論本作からでも楽しめないことは無いが、是非、前作劇場版とTVシリーズを見てからの視聴をオススメする。

実は原作と相違点がある

 この作品だが、実は原作漫画『攻殻機動隊』や押井守による映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』とは、時代設定や主人公草薙素子を含む登場キャラクターの設定、ストーリーを始め多くの相違点がある。故に本作は第三の「攻殻機動隊」とも言われ、原作や映画版では「人形遣い」を中心に話が進行するが、本作品では「もし草薙素子が人形遣いと出会わず、公安9課に残っていたら」という前提に立ったパラレルワールドとして物語が展開されている。

 原作や映画版に対するオマージュが随所に見られるものの、テーマ自体は原作にあるような「電脳化・義体化社会における人間の定義」というものよりも、近未来を舞台に現代社会にも通じる社会問題を主題としている。それ故に、劇場型犯罪と模倣犯という構造を真っ先に描いて絶賛された作品の一つでもあるといえる。

あらすじ

 東南アジア某国にて1999年にPKO部隊として日本から派遣された陸自レイバー小隊。彼らは戦闘車輌を持つゲリラ部隊と接触し、本部からの発砲許可を得られないまま一方的に攻撃を受けて壊滅してしまう。しかしそんな中にも一人の生存者がいた。彼は破壊されてしまったレイバーから脱出した後に、異形の神像が見下ろす古代遺跡へと辿り着く、彼はそれを見たことによって「彼岸の人」となった。

 「方舟」という事件の一件から3年の月日が経過し、2002年冬、かつての特車二課第2小隊の面々は、隊長の後藤と山崎を除いて新しい職場に異動していた。それぞれがそれぞれの日々を送っていた中で、ある日、横浜ベイブリッジで爆破事件が起こり、それは自衛隊の戦闘機F-16Jらしき物体から放たれた一発のミサイルによるものであることがテレビによって報道される。これが全ての始まりとなり、物語はスタートするのである。

 事件に関する様々なデータが錯綜する中、南雲と後藤の前に、陸幕調査部別室の荒川と名乗る男が現れ、「柘植行人(つげ ゆきひと)」という人物の捜索協力を依頼する。後藤は荒川の真意を測りかねて依頼を断るものの、直後にバッジシステムへのハッキングによって、自衛隊三沢基地所属機による幻の東京爆撃が演出されるという事件が発生する。これに過剰反応した警察の露骨な自衛隊への対抗行動により、一部自衛隊部隊が外部との通信を絶って駐屯地に篭城するという事態にまで発展する。そんな中、ベイブリッジ爆破事件を調べていた松井刑事は、後藤から渡された荒川の資料を元に柘植と彼の組織を調べ始める。

 その後も状況は悪化の一途を辿り、在日米軍の圧力もあって事態の早急な収拾を図ろうとした日本国政府は、警察に事態悪化の責任を押し付け、自衛隊に東京への治安出動命令を下す。

 そしてある雪が降りしきる朝、埋立地から3機の戦闘ヘリが飛び立つ。その後、都内の通信施設・橋梁は次々に破壊され、さらに東京上空を周回する3機の無人飛行船から妨害電波が流され、都内に展開した自衛隊部隊はデータが途絶し“孤立”していった。戦闘ヘリの襲来により特車二課は壊滅し、警視庁千代田庁舎が銃爆撃を受けたことにより、官民の通信設備も破壊されていく。東京を舞台にした仮想的な「戦争」が、現実のものとして創り出されていく。

 同じ朝、後藤と南雲は海法警視総監列席の下で緊急招集された警備部の幹部会議に召喚されていた。緊迫した情勢下で南雲と警視庁上層部の対立が決定的となる中、特車二課壊滅を知った後藤は、この期に及んでもなお権力闘争と責任転嫁に汲々とする上層部を見限り、南雲と共に自らの手で事態を収拾する覚悟を固める。そして壊滅した特車二課に代わり、かつての第2小隊メンバーがAV-98「イングラム」と共に呼び集められた。

 戦争という状況下に置かれた東京を舞台に、この「情況」を演出したテロリストを逮捕するため、特車二課第2小隊最後の任務が始まったのである。

作品の特徴

 本作では、前作などでも取り扱っている自衛隊によるクーデターなどをモチーフとして、劇場型犯罪の気風を更に強めた物となっている。特に第一回劇場版とくらべて、押井守独自の都市論や政治論に基づく演出と、当時物議を醸していた議題であるPKO派遣に自衛隊を向かわせるべきかといった話題を加えるなど、監督の思想をより色濃く反映させた作品となり、これまでのものとは一線を画するものとなったのである。

 また、レイバーによる戦闘シーンが冒頭とクライマックスに数分間挿入されるのみに留まり、極めて抑えられたものとなっている。幻の爆撃の演出に代表される、「現実」と「非現実」についての描写も随所に散りばめられている。

 世界観としては、劇場版第一作の「過去の東京」に対し、本作では「現在の東京」がモチーフになっている。特に劇中でのニュースやテレビ番組などといったものには、当時の内容を色濃く反映させており、日本語アナウンスに関しては複数の現役アナウンサーを起用するという程のこだわりを見せている。これは、声優によるうますぎる演技を払拭することで、現実感や臨場感を強調するための措置だと、本人は語っているが、後年のサウンドリニューアル版に至ってはこの思いが汲まれず、プロ声優での収録という形になっている。

ネクストジェネレーションパトレイバー劇場版へと

 この作品で見せたものは、新しく始まっている実写版のネクストジェネレーションパトレイバーにも引き継がれ、その勢いを増しているといえるのだが、確かに実写版のネクストジェネレーションパトレイバーに関しては若干アクションなどといった部分に関して不満が残る部分もあるにはあるので、もしも本作を気に入って実写版も見るのであれば、その部分を留意して視聴することを心がけて欲しいかと思う。